知的障害が原因の非行の対応の難しさ
理解できるはず 伸びるはず
知的障害をともなう非行の問題への対応は非常に難しい。
日常的なやり取りや会話は特に問題がないように思われ、その子に対応する側も、いわゆる「普通」の接し方としてしまうからだ。普通の接し方とは、対応する側が伝えた内容や意図を理解してくれている、或いは理解できるはず、という接し方である。この場合、何故わからないのかという思いから、愛情が欠けてしまう結果になることも多い。それについては、別ページで解説しているのでご覧いただきたい。
知的障害であることを踏まえた関わりでは、その子どもの特性(特徴でもよい)を十分に知ることから始めなければならない。そもそもの生まれ持った能力的に、「普通に出来ないこと」があるからだ。伸ばそうとしても不可能な部分があるのだ。
ところが、軽度の知的障害の場合、出来ないことや理解できないことを、怠け、ふざけ、或いは注意不足と誤解されやすい。理解できるはず、或いは伸びるはず、という認識で接すると能力的な無理が生じてしまい、本人のストレスが容量オーバーとなると爆発してしまう。つまり、問題行動を起こしてしまうのだ。
知的障害のある子どもの間違った適応能力
そして、もっと誤解を招き、対応を悪化させるのが、間違った適応能力だ。
健常者でも似たようなことがあるが、生きていくための子どもなりの学習として、例えば会話場面で、理解できないことがあったとして、笑って誤魔化すことがある。
知的な問題がない場合、誤魔化したことを更に上手く誤魔化しごまかしたり、誤魔化しきれないとなったら上手く訂正・謝罪したり処理能力がある。しかし、知的障害のある子どもは、処理能力に困難があるため、問題が悪化するばかりなことも。人間関係で疎遠されたり、軽蔑されたり、差別されたり、パシリのように悪利用されたりする。
そのため、自尊心は傷つき、自己肯定感は低められ、孤立する。孤立を回避するため、支配される関係性に依存する。ただ、ストレスはたまる。
家庭内での孤立、ストレス
ある障害のある子どもは、家庭内で暴力も伴った叱責で抑圧され、行動制限され、家庭内でも孤立、鬱屈した思いを抱えた。家庭で孤立しているため、学校の先生や友達の気持ちを引きたい、関わりを持ちたいなどの思いから、関わりたい相手を叩く、蹴るといった暴力によって関わろうとした。家庭で学んだ関わる手段なのだ。そして、ストレスの解消方法なのだ。
しかし、年齢が上がり、逆に身体的にも知的にも能力面で勝る同年代の子らから、疎遠にされたり、軽蔑されたり、差別されたり、パシリのように悪利用されたりすることが増えた。その傷つきは年下の身体的に力の劣る児童への暴力となり、性の目覚めとともに性加害行為を起こすこととなった。
対応について
知的障害をともなう非行少年への対応はこちら。
参考になる本
愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか? アセスメントと具体的支援のポイント51
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